おバカさん

2004年6月6日 読書
ISBN:4041245028 文庫 遠藤 周作 角川書店 1962/08 ¥525

はい、てことで、また心にやさしい子供にも読める本シリーズです。

この作品は、タイトルはバカにしていますけど(笑)、とてもいい本です。

外人さん(の宣教師だったかな)の話で、心温まりますよ。

遠藤周作は、キリスタンですので、こういう「人間模様」の作品を書くのが得意な人間です。
ともかく、平易な日本語で、でも最後には誰でも泣けると思います。
正直「世界の中心で〜」よりも絶対にイイ作品だと信じています。

なかなか書店ではお目にかかれない作品ですけど、あったらぜひ読んで欲しいですね。

【更新8日21時】
「おバカさん」というのは、遠藤が見た「人懐こくって」「人がいい」「真面目に生きていて」「一途な」人間、要するに人間界で言う所の『弱い人』に対する「優しい目」で書かれているわけです。
私も(自分で言うなって感じですが)この主人公と同じような人生を送ってきました。会社に入っていても、わずか半年しか顔を合わせていないアルバイトの子に、餞別をもらったり・・・とだいぶ可愛がられました。まぁ、仕事は出来なかったわけですけど。
この作品を見てついつい泣けてきてしまうのは、彼と自分とをシンクロしやすいからだろうと思います。
いずれにしても、日本資本主義の中での弱者ってのはどこにでもいるもので、そうした人に対する『愛』を感じることが出来る稀有な作品といえると思います。

さて。
そんなことを言っている私が更に言わないといけないのですが、私は『愛』という言葉をめったに口にしません。
というのも、これを口に簡単に出してしまった時点で、「愛の安売り」となってしまうからです。だから、付き合っている相手にも、めったに言わないですよ。
なわけで、映画でも何でも「愛」という言葉がついた時点で、私は観る気を失ってしまうのです。流行の曲でも同じ。当然、何度も「Love&Peace!」とか叫んだりする人たちも同じ。
「愛」という言葉ほど難しいものもないし、それ以上に英語のloveを「愛」と訳す時点で無理があるのです。だって、意味が全然違う。たとえば、「make love」は「性交渉」を表すと辞書には書かれていますが、やはりちょっと違うわけで・・・。それくらい難しい言葉を、簡単に口に出すものではありません。

そんなこんなで、この作品。
「無償の愛」それは男女間ではなく生けとし生ける物への愛。
そういうものに涙を流せない人(男女の恋愛モノにしか泣けないような人)には、読まれても意味がないだろうと思います。
それで面白くないと思われたら、遠藤にも失礼ですしね。

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